研究 臨床研究
研究プロジェクト
血液疾患の日常診療で生じるclinical questionを解決するために、我々はJCOGやKSGCTが主導する多施設臨床研究や、新規薬剤や細胞療法の企業治験への参加に加えて、様々な多施設・単施設の臨床研究や症例報告にも積極的に取り組んでいます。特に、国内で利用可能なレジストリやデータベースを活用し、リアルワールドデータを基盤とした臨床ビッグデータ解析に力を注いでおり、プログラミング技術や機械学習を応用した最新の解析手法の導入を進めています。多くのメンバーは入局後に初めて本格的なデータ解析に触れますが、安心して取り組めるように、Rプログラミングの勉強会や臨床研究ミーティングを定期的に開催し、基礎から学べる環境を整備しています。
1. 造血幹細胞移植・細胞療法データベース
日本造血細胞移植データセンターの移植登録一元管理プログラム(TRUMP)や細胞治療レジストリ(FormsNet3)、関東造血幹細胞移植共同研究グループ(KSGCT)のデータを利用して、当科の臨床面での強みである造血幹細胞移植やCAR-T細胞療法に関するデータ解析研究に積極的に取り組んでいます。例えば、成人発症血球貪食性リンパ組織球症(HLH)に対する同種移植成績(Kim H, Transplant Cell Ther, 2024)や、同種移植後に発症する古典的および遅発性肝中心静脈閉塞症/肝類洞閉塞症候群(SOS/VOD)の危険因子や予後に与える影響の解析(Masuda K, Am J Hematol, 2025)、臍帯血移植後に発症する生着前免疫反応(PIR)の危険因子や予後に与える影響の解析(Sakurai M, Am J Hematol, 2025)を行ってきました。また、KSGCTの共同研究として、二次調査を実施し、固形がん既往が同種移植成績に与える影響の解析(Fujii T, Bone Marrow Transplant, 2025)を行ってきました。
2. 血液疾患登録データベース
日本血液学会では、全国規模で血液疾患の発症頻度や治療内容、予後を把握するために、「血液疾患登録」データベースの構築を行っています。我々は、このデータベースを用いて、各血液疾患の発症頻度にCOVID-19パンデミックが与えた影響を解析し、特に再生不良性貧血や免疫性血小板減少症の発症頻度が減少したことを明らかにしました(Sakurai M, Haematologica, 2023)。
3. 保険者・DPCデータベース
近年、保険者から提出される診療報酬明細書(レセプト)や特定健診情報を集積したデータベースや病院から提出されるDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースが様々な疫学研究・臨床アウトカム研究において有用であることが示されています。我々も、九州大学との共同研究として、そのようなデータベースの一つであるLIFE Studyデータベース(https://life.hcam.med.kyushu-u.ac.jp)を活用し、血液疾患に関する疫学研究を行っています。
4. 遺伝子解析を組み入れた症例報告
我々は、これまでに希少な血液疾患や病型、新規治療法やその合併症に関する症例報告を多数発表し、学部生や初期研修医の学会発表、さらには若手医師の論文発表の機会へとつなげてきました。最近では、遺伝子解析を積極的に取り入れることで、興味深い症例の遺伝子異常や分子病態を明らかにした上で報告することを目指しています(Kubota Y, Ann Hematol, 2024; Kitamura A, Leuk Lymphoma, 2025など)。今後、我々が開発した造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査「ヘムサイト」の普及に伴い、このような症例報告の重要性は一層高まっていくことが期待されます。
当科が参加している臨床研究
| グループ | 研究責任者 | 実務責任者 | 課題名 |
| JSH | 甲田 祐也 | 甲田 祐也 | 血液疾患登録 |
| 単施設 | 片岡 圭亮 | 甲田 祐也 | 造血器疾患患者における診断、治療成績、合併症ならびに支持療法に関する後方視的解析 |
| 多施設 | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | 関東造血幹細胞移植共同研究グループ(KSGCT)移植患者データベース作成調査研究 |
| JALSG | 松木 絵里 | 松木 絵里 | JALSG 参加施設において新規に発症した全 AML、全 MDS、全 CMML 症例に対して 施行された治療方法と患者側因子が 5
年生存率に及ぼす影響を検討する観察研究 (前向き臨床観察研究) —JALSG AML/MDS/CMML Clinical Observational Study (JALSG-CS)-17— |
| JALSG | 松木 絵里 | 松木 絵里 | JALSG CS-17研究付随研究 急性骨髄性白血病を対象としたクリニカルシーケンスの実行可能性に関する研究 (JALSG CS-17-Molecular) |
| JPLSG | 片岡 圭亮 | 松木 絵里 | 小児、AYA世代および成人T細胞性急性リンパ性白血病に対する多施設共同後期第II相臨床試験 |
| JSH | 松木 絵里 | 松木 絵里 | 慢性骨髄性白血病患者に対するチロシンキナーゼ阻害薬中止後の無治療寛解維持を検討する日本国内多施設共同観察研究 |
| JSH | 松木 絵里 | 松木 絵里 | 慢性骨髄性白血病患者のチロシンキナーゼ阻害薬中止後における無治療寛解の維持機構解明を目指した変異BCR-ABLと宿主免疫応答の解析 [J-SKI付随研究1] |
| 多施設 | 片岡 圭亮 | 松木 絵里 | アグレッシブATLの予後に影響する因子について検討する多施設共同前向き観察研究 |
| 単施設 | 片岡 圭亮 | 水野 洸太 | 造血幹細胞移植後の免疫再構築およびウイルス感染症に関する検討 |
| 多施設 | 片岡 圭亮 | 水野 洸太 | リンパ系腫瘍に対するキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法に関する臨床的および分子学・免疫学的解析 |
| 多施設 | 片岡 圭亮 | 水野 洸太 | 造血器腫瘍の網羅的病態解析 |
| JCOG | 片岡 圭亮 | 櫻井 政寿 | JCOG1911: 高齢者または移植拒否若年者の未治療多発性骨髄腫患者に対するダラツムマブ+メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ(D-MPB)導入療法後のダラツムマブ単独療法とダラツムマブ+ボルテゾミブ併用維持療法のランダム化第III相試験 |
| JCOG | 片岡 圭亮 | 櫻井 政寿 | JCOG2008: 未治療高腫瘍量濾胞性リンパ腫に対するオビヌツズマブ+ベンダムスチン療法後のオビヌツズマブ維持療法の省略に関するランダム化第III相試験 |
| JCOG | 片岡 圭亮 | 櫻井 政寿 | JCOG2201:中枢神経系再発高リスクの未治療びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫に対する中枢神経系再発予防を組み入れた治療法のランダム化第 III 相試験 |
| JCOG | 片岡 圭亮 | 櫻井 政寿 | JCOG2210:未治療末梢性 T 細胞リンパ腫に対する初回導入化学療法後の完全奏効例に対する自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法のランダム化第 III 相試験 |
| JCOG | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | JCOG1411:未治療低腫瘍量進行期濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブ療法早期介入に関するランダム化比較第III相試験 |
| JCOG | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | JCOG-バイオバンク・ジャパン連携バイオバンク(血液内科) |
| JCOG | 片岡 圭亮 | 櫻井 政寿 | JCOG2008A1: 未治療高腫瘍量濾胞性リンパ腫における予後を予測するバイオマーカーの探索的研究 |
| JCOG | 櫻井 政寿 | 井口 亜美 | JCOG1911A1:多発性骨髄腫に対するダラツムマブ併用化学療法における 効果予測因子および抵抗性機序に関する探索的研究について |
| JCOG | 櫻井 政寿 | 井口 亜美 | JCOG1411A1 未治療低腫瘍量進行期濾胞性リンパ腫における予後を予測するバイオマーカーの探索的研究 |
| 多施設 | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | 再生不良性貧血の症例登録・追跡調査研究 |
| 多施設 | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | 再発・難治性大細胞型 B 細胞リンパ腫に対する Lisocabtagene maraleucel 治療の多施設共同観察研究 - JSCT CART23 - |
| 多施設 | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | HBV 既往感染歴を有する造血器腫瘍における iTACT-HBcrAg モニタリングによる HBV 再活性化対策の有用性:多施設共同前方視的観察研究 |
| 多施設 | 片岡 圭亮 | 櫻井 政寿 | 造血器腫瘍臨床におけるクリニカルWGSのfeasibilityと有用性の検討 |
| 多施設 | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | 再発/難治性大細胞型B細胞リンパ腫に対するaxicabtagene ciloleucelの安全性と有効性(Axi-Cel.24) |
| 多施設 | 片岡 圭亮 | 櫻井 政寿 | 初発再生不良性貧血を対象としたHLA欠失血球とPNH型血球の前向き観察研究 |
| 多施設 | 櫻井 政寿 | 櫻井 政寿 | 抗C5抗体療法中の日本人発作性夜間ヘモグロビン尿症患者における治療反応に関する後方視的観察研究(chart review study) |

